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脳の「時計」は一つではない 科学大研究グループが脳領域同士時間を共有しながら独自にも動く仕組みを発見(第18950号)

人類は日常生活の中で、「いま何秒たったか」「次にいつ何が起こるか」を絶えず予測している。では、脳の中にある時間の物差しは、一つなのか?。それとも複数の脳領域がそれぞれ別の時計のように時間を計っているのか?。

東京科学大学医歯学総合研究科細胞生理学分野の今村啓人大学院生、平理⼀郎准教授らの研究チームは、マウスに次の報酬タイミングを予測する行動課題を学習させ、前頭葉の⼆次運動野(M2)と頭頂葉の後部頭頂皮質(PPC)の活動を、2光子カルシウムイメージングによって同時に記録した。2光子カルシウムイメージングとは、神経細胞が活動すると細胞内のカルシウム濃度が変化することを利用し、多数の神経細胞活動を顕微鏡で同時に観察する技術。

神経活動から「脳がどの時点を表しているか」を読み解いたところ、二つの領域はいずれも時間を表現していたが、その読み取り結果は常に完全に⼀致しているわけではなかった。

具体的には、M2とPPCが同じように時間を読み違える「協調誤差」と、片方だけが読み違える「独立誤差」の両⽅が⾒つかった。

これは、脳の時計が一つに固定されているのではなく、複数の領域が同じ時間を共有する場合と、それぞれ別々に時間を進める場合の両方を併せ持つことを示している。

さらに研究チームは、「なぜ二つのモードが生まれるのか」というメカニズムを調べるため、計算機上の神経回路モデルを構築し、解析。その結果、二つの脳領域をつなぐまばらな結合と、脳全体に広がる1/fゆらぎ(低い周波数ほど変動が大きく、高い周波数ほど小さくなるゆらぎのこと。自然界や生体信号に広くみられ、脳活動にも現れる)が、この二つのモードを生み出すことを明らかにした。

まばらな結合は、二つの領域をそろえる方向に働き、広い範囲に及ぶゆらぎは、各領域が完全には同期せず、独自の時間表現を保つ余地を生み出していた。これは、脳が「複数領域で同じ時間を共有する」安定性と、「必要な領域が独自の時間を追う」柔軟性を両立させる仕組みを⽰すもの。

この研究成果は、複数の脳領域が協力しながらも独立性を保つ仕組みの理解を進めるもの。将来的には、認知機能の理解や、脳領域間の連携の乱れが関わる精神・神経疾患 の理解、さらには安定性と柔軟性を兼ね備えた脳型AIやロボット制御システムの開発につながることが期待される。