大阪大谷大学、国立環境研究所、長野県諏訪湖環境研究センター、筑波大学、水産研究・教育機構、愛媛大学、松山大学、北海道大学らの研究グループは、全国的な環境DNA調査を実施し、ブラックバスの分布拡大過程を推定した。
ブラックバス類は北米原産の淡水魚で、食用魚や釣魚として世界各地に導入されている。ゲームフィッシングにおいて人気を博す一方、捕食や競争を通じて在来生物群集に深刻な影響を与えることが知られている。
日本には、1925年と1972年に米国から芦ノ湖(神奈川県)に導入され、各地に移植された「オオクチバス」をはじめ、1988年に米国から池原貯水池(奈良県)に導入された「フロリダバス」、導入経緯は不明ながら1990年頃に長野県と福島県で初確認された「コクチバス」の3種が定着している。
この3種はいずれも深刻な生態系影響や漁業被害を引き起こしており、現在も分布を拡大していることから、効果的な防除策が求められている。
研究チームは、日本に定着したブラックバス3種の遺伝的なタイプ(ハプロタイプ:1本のDNA上に存在する一続きの配列で、まとめて受け継がれる複数の遺伝的変異のセット)を網羅的に検出する分析手法を開発し、東北地方から中国・四国地方にわたる31都府県の湖沼・河川で、水に含まれる生物由来のDNAを検出・解析する環境DNA調査を実施した。
その結果、調査した121地点中87地点で少なくとも1種類のブラックバスのDNAが検出され、得られたハプロタイプの分布情報から、種ごとに異なる分布拡大様式が推定された。
導入時期が最も古いオオクチバスでは、地理的距離に応じて遺伝的差異が増加する傾向が見られ、近距離の移植、または自然分散により分布を拡大したことが示唆された。
一方、遅れて日本に導入されたフロリダバスでは、この傾向は見られず、導入地から遠く離れた琵琶湖への大規模、または繰り返しの移植が行われた可能性が示唆された。
1990年代に定着が確認され、近年の急激な分布拡大が懸念されるコクチバスは、東北地方から近畿地方の広い範囲で検出されたが、最新の行政調査で報告されている分布の最前線と一致した。
現在も続くブラックバス類の分布拡大には、自然分散だけでなく、ゲームフィッシュとしての人気を背景とした違法な密放流が大きく関与していると考えられ、その社会的抑止の強化が求められる。今回の研究では、環境DNAを用いたハプロタイプ解析が、ブラックバス類の分布状況の把握に加え、分布拡大過程や人為影響の推定にも有効であることが示された。迅速かつ広域的な監視を可能とする本手法は、ブラックバス類に限らず様々な外来種への応用が可能であり、将来的な外来種の拡散防止や管理対策の高度化への貢献が期待される。