子ザルを抱くニホンザル(撮影:中道正之)
大阪大学の中道正之名誉教授と山田一憲准教授は24日、ウジがわいた野生のニホンザルは群れから忌避される中で、親しい仲間は毛づくろいをしたり、死亡しても遺体の近くに留まったりしていたと発表した。人以外の死生観を考える「比較死生学」に貢献できるとしている。国際学術誌「プライメーツ」に同日付で掲載されている。
多くのサルの母親は死亡した子どもを持ち運ぶと知られている。だが、大人の亡骸は移動させられることはなく放置される。野生の霊長類の生前の絆が死後にどのような影響を与えるを調べた情報はこれまでになかった。
研究チームは岡山県真庭市で、4頭のサルと平均年齢20歳の仲間たちの行動を1990年から観察。4頭に対する死亡直前・直後のサルの動きを記録した。
調査によると、93年に群れの最優位オスがウジに侵された際、他の仲間は忌避したものの日常的に毛づくろいをしていたメスがそれを継続してウジをつまんだ。99年に死んだオスの遺体では、毛づくろい仲間であったメスの娘が、毛を整えていたことが確認された。03年には、死んだオスに親しかったメス、血縁者、子ザルが接近したという。

死亡 3 日前のオスの傷口近くを毛づくろいするメス(撮影:同)
チームは、ニホンザルが仲間の死骸に示す行動は、人間が親しい人や近親者の死に悲しみなど特別な感情を持つことと類似していると分析。死に関する事柄を研究する「死生学」を人間以外にも広げることで、仲間との別離で人間と動物の心がどのように進化してきたのかを明らかにできるとしている。
中道名誉教授は「傷口にウジがわいた老オスに毛づくろいしていたのは、そのオスが長年親しくしていたメス。こんな場面を目撃して、サルと人の近さを実感した」とコメントしている。