海洋研究開発機構(JAMSTEC)
海洋研究開発機構(JAMSTEC)のシィエ・ジャオ、中嶋亮太研究員らのグループは今月、海洋のマイクロプラスチックが水中の浅い部分から深いところまで広範に高濃度で存在することを明らかにした。グループは深い海底にプラスチックが供給される現状に、危機感を覚えると訴えている。1日付で学術誌「ネイチャー」に掲載された。
プラスチックは毎年900万から1400万トンが海に流れ込んでいるとされるが、海中でマイクロプラスチックがどのように分布しているのかは明確になっていない。グループは2014年から10年間にわたり、北大西洋など世界の1885カ所でろ過装置を使って拡散状況を調査した。
マイクロプラスチックは魚の消化器官の炎症や繁殖力の低下につながり、人間にも呼吸器障害やがんの要因になるとされる。海に流れ込んだレジ袋やストローなどが劣化して数ミリサイズになることで体内に入り込む。
研究によると、マイクロプラスチックの供給源に近い浅瀬で濃度が高く、沖合の30倍に上ったという。集まりやすいとされるマリアナ海溝では1万3500粒子が確認された。深くなるほど密度は小さかったが、その割合は地域によって異なった。複数の深度で調べた1立方メートルあたりの粒子の中央値は205個だったと紹介している

シィエ・ジャオ研究員
シィエ研究員は「プラスチックのあまりもの多さにショックを受けた」と説明。数千年単位で被害がでると指摘した。複数の生物に影響を与える可能性を問題視している。今後について、「世界中の研究者と同様の方法でデータを収集して、海中のプラスチック濃度を100年スケールで評価したい」と話している。

中嶋亮太研究員
中嶋研究員は「海面から海底までマイクロプラスチックが供給されていることが分かった」とし、生物を介することで早く深い水中に到達すると推測されるという。「検出できていないナノプラスチックをJAMSTECとしても次のターゲットにしていきたい」とコメントしている。
■ナノプラスチック
1マイクロメートルから5ミリのプラスチック粒子。マイクロプラスチックよりも小さいために、移動しやすく浸透しやすい。過去には人間の血液や肺の細胞、精巣などから見つかっている。マイクロプラスチックは細胞にアレルギー反応を起こさせるなどの毒性が確認されており、ナノプラスチックも同様の影響が推測される。