順天堂大学と日本アイ・ビー・エム㈱(日本IBM)は、メタバース上で入院患者との面会ができるメタバース面会アプリ『Medical Meetup』を共同で開発し、アプリストアでの一般配信を数週間をめどに開始する。また、翌8月1日からは順天堂大医学部附属順天堂医院で、面会アプリの運用・臨床研究を開始する。順天堂大と日本IBMは今後、この面会アプリを、他の医療機関へ展開するとともに、講演会・遠隔診療などへユースケースを拡張することも視野に入れている。
■病気に立ち向かう力につながる「面会」
入院患者にとって家族や親しい人との面会は、ストレス軽減や癒しを与え、病気に立ち向かう力にも繋がってくるほど重要とされている。しかし、高度な医療を受けるために入院していると容易に面会ができなかったり、感染症の流行等で面会の制限を受けることもある。また、身じたくや装いなど面会をすることへの気遣いや遠慮、時間的な制約によって面会がかなわないことも少なくない。
電話やオンライン面会は、このような状況下でも気軽に使えるコミュニケーションツールとして多く利用されているが、対面のような〝ぬくもり〟に欠けるところがあった。
■〝ぬくもりある面会〟を再現
順天堂大と日本IBMはこうした状況に対し、昨年発足したメディカル・メタバース共同研究講座の複数あるテーマの一つとして医療サービスの向上を検討してきた。さらに今回、患者と病院外の方が様々な制限や制約などを乗り越え、実際に対面で会わなくても〝ぬくもりのある面会〟実現できるメタバース面会アプリを共同で開発し、数週間後をめどに配信予定。
面会アプリでは、患者と面会者のアバターがリゾート施設等の非日常空間で会話をしたり、お出かけや乗り物での移動、ハイタッチ等で擬似的に触れ合えるなど、通常の面会の枠を超えた体験を楽しむことができる。
また、8月1日から順天堂医院小児医療センターに入院している小児患者と家族がメタバース面会アプリでふれあう機会が増えることでより元気で心穏やかに過ごせることを目指した運用・臨床研究を始める。
運用・臨床研究では、賛同した一定期間以上入院している小児患者と家族を対象に、面会アプリを実際に使用して評価してもらう。さらに、面会をサポートする医療従事者も、本面会アプリの評価を行い、ニーズに添えるように改善も検討する方針だ。
今後は面会アプリをさまざまな医療機関へ展開し、国内外の患者の面会体験の向上や、病気に立ち向かう力を支援する基盤にすることを目指す。また、身近な人々との面会だけでなく、医療講演会や遠隔診療、国内外コミュニティー広場などの各種医療サービスも提供できるよう、患者家族間だけでなく、医療従事者とのコミュニケーションも含めて活用シーンを広げていくことを目指す。