慶應義塾大学では、多岐にわたる「エフェメラ」と呼ばれるアイテムの中から、ポスターやパンフレットなど展覧会やアート・イベントに合わせてつくられ、社会に広がるメディアとしての機能をもった印刷物エフェメラに焦点を当てた展覧会を3月18日から開催する。特に、大学研究所のアーカイヴや図書館に所管された資料から、戦後美術で情報の伝達と実験的な表現の重なりが見られるアイテムを紹介する。また、印刷物/エフェメラに関心を寄せる現代作家による二人展(河口龍夫・冨井大裕)も同時に開催する。会期は5月10日までで、会場は同大三田キャンパスの慶應義塾ミュージアム・コモンズ展示室。
美術作品や書籍のように長期的な保存を本来の目的とせず、時限的な情報掲載や使用が主たる目的であるチラシやパンフレットなどのアイテムは、限られた期間で消えゆくものとして「ephemera=1⽇だけの、短命な」の⾔葉が与えられ、『エフェメラ』と呼ばれている。
安価につくられ配布された印刷物のエフェメラ(printed ephemera)は、時代ごとの出来事や空気を伝える重要なアイテムで、近年、ミュージアム をはじめとする文化機関において蒐集の対象となっている。
展覧会では、エフェメラ、特に無料もしくは安価に刷られることで社会に広がるメディアとしての機能をもった印刷物エフェメラに焦点を当てる。
コンセプチュアル・アートやイベント、映像表現といった新しい表現が現れ展開していった戦後美術のなかで、作品や展覧会の情報の伝達と紐づきながら、同時にアーティストの表現の場となったパンフレットやカタロ グ、アート雑誌などの印刷物エフェメラでは、限られた紙面のなかでさまざまな実験が試みられている。
展覧会ではこうした紙面上の実験を紹介しながら、結果的に過去の出来事を伝え残す存在となったエフェメラに目を向けて、情報や表現の乗り物としての印刷物/エフェメラについて考える。