岡山大学と東北大学、兵庫県立大学などの研究チームは、水分子が光合成を担う「ゆがんだイス」型の触媒と結合した後で、内部へ取り込まれていく様子を初めて観測した。これは光で水を分解する人工光合成触媒の設計に、重要な指針を提供するという。英国科学誌「ネイチャー」に掲載されている。
光合成は「光化学系Ⅱ」と呼ばれるたんぱく質などからなる複合体が、エネルギーを吸収して酸素分子を形成する反応から始まる。実験では光化学系Ⅱが光を吸収して、次の状態の形成が始まる20ナノ秒から、それが終結する5ミリ秒までの立体構造を6時点で捉えることに成功した。
さらに状態変化の様子をスナップショットで観察。これにより光化学系Ⅱの内部では、たんぱく質と水分子、集光色素が協奏的に働いて作用することで、水の移動や取り込み、水素イオンの排出が進行する様子が確認された。
その結果、2011年と15年の分析で光化学系Ⅱの中で発見されていた「ゆがんだイス」型の触媒に、運動性の高くなった水分子が取り込まれていく様子を観測している。
研究チームを率いた岡山大の菅倫寛教授は「研究開始から成果にするまでに5年もの月日がかかった。共同研究者や研究室のメンバーに感謝している」とコメントした。