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天然物を利用した発光分子の新規合成法 東大など4大学が開発 3Dディスプレイへの応用に期待

東京大学など4大学からなるチームは共同で、発光などを担う「芳香族クロモフォア」を自在に改変できる標的分子を合成するプラットフォームを開発した。3Dディスプレイやセキュリティインクなどへの応用が期待されている。

研究グループはロウバイ科植物 「チモナンサス・プラエコックス」から得られるキモナンチンなどに代表される2量体型天然物に着目。これら天然物は、キラルなC₂対称型2量体型含窒素縮環骨格「ビスピロリジノインドリン(BPI)」を有する。

研究では、アミノ酸の一種である「L-(D-)トリプトファン」からBPI骨格をグラムスケールで合成し、多様な芳香族クロモフォアを4連続の薗頭カップリング反応で一挙に連結。D₂対称性を有するキラルな8の字型マクロ環状分子を構築した。

14〜66員環構造を有する8の字型マクロ環を系統的に合成し、互いに交差する芳香族クロモフォアの角度や距離、長さを精密に制御するモジュラー式合成プラットフォームを開発した。

これにより、骨格や立体化学を改変したD₂対称型キラル8の字型マクロ環を自在に合成し、有機分子として非常に優れた円偏光発光効率を示す32員環マクロ環を創り出すことに成功している。

4大学からなるグループは「天然物化学と材料化学を融合した本アプローチは、ほぼ独立して発展してきた両分野の架け橋となるユニークで重要な成果である」としている。