京都⼤学の⾬森賢⼀主任研究者のグループは、不安障害に関わる遺伝⼦とその遺伝⼦の発現する脳回路の関連性を明らかにした。更なる分析によって根本的な原因に新たなる洞察をもたらすという。
不安障害は全般性不安障害や社会不安障害、強迫性障害などいくつかのタイプが存在し、遺伝的な要因が原因の1つとも考えられる疾患だ。これまで不安になりやすい性質である特性を持つ人に遺伝子変異が明らかになり、それがどの遺伝子で起こるのかが特定されてきた。だが、それが脳のどこに発現するのか、遺伝的要因と神経回路の関連は不明であった。
そこで研究グループは、不安障害に関連する遺伝⼦が発現しているかどうかを人の脳の200以上の領域からサンプルされたデータを⽤いて統計学的解析を⾏った。そして、不安関連の遺伝⼦がよく発現する脳領野を特定した。
すると、⼤脳基底核、中脳、および海⾺や辺縁系で⾼い発現を⽰すことを発見した。これらの領域を解析したところ、脳の中で特徴的な状態を⽰す二つの不安関連遺伝⼦群が認められた。1つの遺伝⼦群は海⾺・辺縁系で強く発現し、もう1つの群は中脳と⼤脳基底核であった。
統計解析によって同定された脳領域は、これまでの研究によって不安⾏動に関与していることが⽰唆された部分と⼀致。不安関連遺伝⼦の空間マッピングに成功している。
更に、研究グループは脳の発⽣期における解析を⾏い、不安関連遺伝⼦の発現を脳の発達過程で追跡。2つの不安関連遺伝⼦群が、成⼈期の特定の発達段階で異なるパターンを持っていることを突き止めている。
研究グループは「研究において同定した遺伝⼦群の更なる分析によって、不安障害の根本的な原因に新たな洞察をもたらす」と評価している。