順天堂大学は鹿島建設㈱との間で、「パーソナル・アダプティブ・スマートホスピタル共同研究講座」開設の契約を6月30日に締結した。同講座では、超高齢社会での医療環境の課題解決に資するテーマとして、新たなデジタル技術を活用した高齢者に優しい病院づくりを検討する。患者一人ひとりに合わせた医療を行う〝パーソナライゼーション〟という考えの下、病院の建物も患者一人ひとりに合わせた空間とすることを「ホスピタルアダプテーション™」と呼び、新たな考え方として提唱する。講座の開設期間は7月1日から3年間。
具体的には、順天堂東京江東高齢者医療センターを舞台に、⑴「そと部屋®」を利用した認知症対策・予防、⑵メタバーを活用した情報発信と地域医療連携の推進、⑶デジタルツインによる転倒・転落予防―の三つのテーマに取り組む。「そと部屋」とは、緑などの自然の要素を室内空間に取り込むバイオフィリックデザインに、光や音などの能動的な環境制御を融合させた五感に訴える鹿島独自の技術を駆使したウェルネス空間。
各テーマに鹿島が有するデジタル技術を適用し、効果を検証。また、得られた成果を、順天堂大医学部附属順天堂医院をはじめとする関連施設に展開することを視野に入れている。
鹿島にとっては、医学的見地からの自社技術の効果検証による、今後の病院設計に活かせるノウハウの獲得、高齢者医療センターにとっては、患者満足度の向上やスタッフの業務負荷軽減、経営改善が期待される。
■研究テーマと期待される成果■
⑴「そと部屋」を利用した認知症対策:予防病棟のデイルームにメタバースも体験できる「そと部屋」を設置。室内空間に外部空間の心地よさを取り入れることで、建築環境による認知症患者のQOL(生活の質)の向上とリハビリへの効果が期待される。
⑵メタバースを活用した情報発信と地域医療連携の推進:メタバース空間を用いた新たなコミュニケーション技術で、閲覧者がより現実に近い体験ができるコンテンツの発信が可能。また、転院先選びの納得感や施設間引継の意思疎通が向上し、業務の効率化が図れる。
⑶デジタルツインによる転倒・転落予防:過去のデータから入院患者の転倒・転落リスクを分析し、分析結果をデジタルツインに重ね合わせて情報発信。看護師が当該情報を事前に確認することで事故防止につなげる。