東京慈恵会医科大学の永嶋宇助教らは5日、マウスの脳幹にある外側腕傍核 (PB)から中脳の腹側被蓋野(VTA)への経路が行動タスクに応じて正と負の情動シグナルを伝達することを発見したと発表した。
研究ではPBによる正負の情動シグナルの下流回路メカニズムを明らかにするため、PBの主要な投射先の1つ腹側被蓋野(VTA)への経路に着目。状態依存的な情動価の制御におけるPB–VTA経路の役割を明らかにするため、同一個体を用いて異なる行動タスクをPB–VTA経路への光遺伝学的介入操作とともに行った。
その結果、PB–VTA経路はオペラントタスクでは正の情動シグナルを伝達し、場所嫌悪タスクでは正または負の情動シグナルを伝達しうることが明らかになっている。さらに、AAV-mGAD65-Creを用いてVTAの抑制性細胞を薬理遺伝学的に抑制した実験を実施。VTAの抑制性細胞が、PB–VTA経路による負の情動シグナルを調節していることが明らかになりました。
研究グループは「今回着目したPBやVTAといった脳皮質下領域はマウスのみならずヒトにも存在する」とし「多様な疾患で見られる情動制御障害などのメカニズムの解明や治療法の開発にも繋がる基礎研究に貢献できる可能性が考えられる」と説明している。