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「高等教育情報のデータ・サイエンス:データ基盤の構築とその活用に向けて」 大学改革支援・学位授与機構が大学質保証フォーラム

大学改革支援・学位授与機構は、9月26日㈫に令和5年度大学質保証フォーラム「高等教育情報のデータ・サイエンス:データ基盤の構築とその活用に向けて」を開催した。

今年度のフォーラムでは、日本における高等教育質保証システムの重要な構成要素の一つである高等教育の情報公表について、米国・英国におけるデータ基盤の構築と活用の先行事例を紹介するとともに、日本国内の政策や現状を踏まえ、今後の我が国における展開の方向性を探るために議論した。

フォーラムの進行を同機構の森利枝研究開発部教授が務め、プログラム前半では福田秀樹機構長の開会挨拶に続き、米国のAmerican Institutes for Research(AIR)で主席研究員と IPEDSプロジェクトディレクターを務めるクリス・コーディ氏、同じくAIR上席研究員及びIPEDS副プロジェクトディレクターであるローマン・ルイス氏、英国のHESA (Jisc傘下)データ・イノベーション副ディレクターのダン・クック氏による基調講演が行われた。

基調講演を行うコーディ氏㊤とルイス氏㊦

コーディ氏とルイス氏からは、IPEDS(The Integrated Postsecondary Education Data System:中等後教育総合データシステム)の沿革をはじめ、現在行っているデータ収集システムの調査対象(連邦学資援助プログラム対象の高等教育機関は報告必須)、収集したデータの質担保のためのキーホルダーやコーディネーターといった役割配置、収集データの確認手法、データ収集業務の3年ごとの見直しなど、幅広く情報提供があった。また、データ提供者・利用者との意思疎通のための週報の作成、無料オンラインコミュニティやSNSの活用、IPEDSが資金提供している研修センター、データフィードバックレポート等の主要なデータ製品、データユーザレベルに合わせた様々な情報提供ツール等も紹介された。

クック氏からは、英国ではイングランドやスコットランドといった各地域がそれぞれ高等教育政策を策定する中、HESAが英国全体の主要データ収集・調査機関として政府を含めた様々な機関から高い信頼・評価を得ており、高等教育データガバナンスに組み込まれていることの説明があった。また、ネットワークや各種サービスを提供するJiscへの合併の経緯、HESAでのデータ収集・管理システムとその質確認のプロセス、ヘルプデスク設置等のデータ提供者へのバックアップシステム、ウェブツールやデータセット等を用いてのデータ提供についても言及があった。サイバーセキュリティの重要性が高まる中で、調査活動を維持しながらも、情報収集とデータ管理の向上や、データ利用の複雑性の低減と効率の最適化を図ることが今後の課題であるとの意見も述べられた。

基調講演を行うクック氏

プログラム後半のパネルセッションでは、テーマを巡る国内パネリストからの日本の現状と課題として、文部科学省高等教育局視学官の中村真太郎氏からは高等教育機関の情報公表制度に関する法令改正の変遷や最近の関連政策、青山学院大学教育人間科学部教授の杉谷祐美子氏からは情報公表の趣旨や大学ポートレートの現状と論点、同機構の蔵川圭研究開発部教授・大学ポートレートセンター長からは大学改革支援情報基盤の諸相として同機構の各事業での収集データとその課題認識等について、それぞれ発表があった。

発表後のパネルディスカッションでは、データ活用の目的から基盤を構築するという発想に着目し、①政策の立案、②個別機関のIR(Institutional Research)、③進学希望者等の個人-という三つのレベルでデータはどのように活用されているのか、学生や教員の個人データの収集をどのように可能にしているのかといったことに関して、米国・英国の状況などの事例を交えて説明。また、過度なランキング化への懸念といった話題にも及び、参加者から寄せられた質問への回答を交えながら活発な意見交換が行われた。最後に同機構の光石衛理事の閉会挨拶で、活発な議論が展開されたフォーラムは幕を閉じた。

活発な議論が展開されたパネルディスカッション

今年度も昨年度までと同じくオンラインで開催したが、国内外からの登壇者全員は学術総合センターに参集し配信を行い、高等教育関係者を中心に国内外から約440名の参加(視聴)があった。

当日の各登壇者の発表資料は同機構のウェブサイト(https://www.niad.ac.jp/consolidation/international/forum/)に掲載している。