岡山大学の松本和幸助教らの研究グループは、超音波内視鏡(EUS)を用いてすい臓に生じる比較的稀な腫瘍である「すい神経内分泌腫瘍」に対してラジオ波で焼灼(しょうしゃく)を行い、熱凝固(ねつぎょうこ)壊死させる国内初の臨床研究を行い、腫瘍を死滅させることに成功した。今後5例の患者に実施する予定。
すい神経内分泌腫瘍はすい臓の細胞から発症する希少ながんだ。治療の基本は手術だが、切除術は難易度が高く、体への負担も大きい。切除後には約2~3割で糖尿病の悪化や新規発症が起こるとされている。
国のガイドラインでは原則として切除するとしつつも、1センチ未満であれば経過観察を推奨しているが、大きくなれば切り離さざるをえない。そのため、小さいうちにEUSを使って腫瘍にエタノールを注入して壊死させる治療が海外では実施されている。
だが、この治療でも約2割は腫瘍が残存することなどを踏まえ、より治療効果が高いとされる「ラジオ波焼灼術」を行った。今後も5例の患者に対して同手術を実施していく予定だ。
松本教授は「すい臓切除は外科切除の中でも手技難度が高く、切除後には膵機能低下による糖尿病発生などの合併症もある」と指摘。「患者さんの体に優しくかつ、治療効果が高い内視鏡的低侵襲治療を目指していく」と力を込めた。