国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)と欧州連合が設立した事業体であるFusion for Energy(F4E)は、日欧共同で実施している幅広いアプローチ(BA)活動等を通じて、実験装置「JT-60SA」の改修を進めてきたが、改修を完了して統合試験運転を5月30日に再開した。
JT-60SAは、フュージョンエネルギーの早期実現を目指し、イーター計画と並行して日欧が共同で建設した超伝導のトカマク型の実験装置。令和3年3月に発生した絶縁損傷のため、統合試験運転を中断し、以降、実施したリスク評価に基づき、超伝導コイルへの絶縁損傷を最小限に留められるように大幅な改修を実施してきた。
具体的には、損傷した接続部に加え、損傷はないものの同等の構造を有する箇所や構造の異なる同種の箇所について徹底した品質管理の下で改修を実施。通常運転とは異なる事象が発生した場合でも、コイルの損傷を抑えるための絶縁強化を行った。
また、絶縁損傷に至らないための対策として、超伝導コイルにかかる電圧抑制のための電源設備の改造、クライオスタット内の真空状態を監視するセンサーの導入などを実施した。
これらの改修作業により、JT-60SAが初プラズマを達成するために必要な性能を確保できたため、統合試験運転を再開した。統合試験運転は、すでに開始した真空排気運転、その後の超伝導コイル冷却、通電試験等を経て、複雑なJT-60SAの全てのシステムが設計どおりに連携して機能することを実証することが目的で、そのなかで、今年秋の初プラズマ達成を目指す。
QSTとF4Eは、今回得られた知見をイーター及び将来の原型炉に生かすとともに、フュージョンエネルギーの早期実現に向けて、引き続き積極的に取り組むこととしている。