麻布大学の鈴木武人准教授らの研究グループは17日、牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)感染が牛の消化管細菌叢を変化させることを見出したと発表した。BLVに関する副次的被害を解明する鍵となることかもしれない。
研究では、国内の農場で飼われている42頭の乳用牛を対象に、血液中の栄養成分、第一胃(ルーメン)と腸内の細菌叢を解析。その結果、BLVに感染していない群とBLV感染群の間には血液中の栄養成分の差がなかった。
ルーメンの細菌叢でも主要な違いは認められていない。しかし、腸内細菌叢においてはBLV感染牛で微少な変化が認められている。
次に、細菌と細菌の関連性を観察する「共起ネットワーク分析」を実施。その結果、感染していない群とBLV感染群のルーメンおよび腸内の共起ネットワークが異なることが示された。
この変化は小さいものであるが、BLV感染してもすぐに症状が出ないことと一致しており、長期間に渡る小さな変化が、長期的に牛の健康に影響を与えていると考えられる。この結果は、感染して生涯無症状の牛でもBLVが牛の健康に悪影響をもたらしている可能性を示すものだ。
研究グループは「消化管細菌叢は、生体内の免疫機構への影響など健康に密接に関係していることから、この研究成果がBLVについて、直接的な影響(リンパ腫発症)だけでない、乳量や肉質の低下、繁殖成績の低下、健康状態の悪化など副次的な被害との関連性を解明する鍵となることが期待される」とコメントしている。