キュウバンフサゴカイ(提供:自見直人講師)
名古屋大学と琉球大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の自見直人講師らの研究グループは、南大東島沖(沖縄県)の深海で新種のゴカイを発見したと発表した。これまでの生息環境を乗り越えて新たな場所に進出した進化的転換点にあるという。国際学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に今月3日付で掲載されている。
吸盤(きゅうばん)を持つフサゴカイがほかに存在しないことから、「キュウバンフサゴカイ」と命名された。キュウバンは堆積物中に巣を作って暮らすフサゴカイ類だが、例外的に堆積物のない環境に進出した種だ。海中の岩などに生息するカイメンに張り付いているところを発見した。
ゴカイの仲間は海底の泥や砂にトンネル状の巣を作って生活する種が多いが、近年の調査で堆積物の少ない海底にも多くのゴカイが生息していると分かっている。
グループが調査をした南大東島沖の海底はサンゴ礁が沈降してできた深海環境。海底が崖のようになっていることから堆積物はほとんど残らないが、ガラスカイメンが多くはえている。そのような中で、キュウバンがカイメンに張り付いている状態で確認された。
調査によるとキュウバンは体の一部を吸盤のように変化させてカイメンに巣を作るという新たなスタイルを獲得しているという。グループは、カイメンとの共生が吸盤という新しい形や張り付く生き方の原動力になっている可能性があると推測している。
自見講師は「砂が溜まっていない一見住むことが大変そうな岩にも、吸盤をもってカイメンに貼り付くことで生きていけるそんな驚きの進化が南大東島沖の深海にいるゴカイで発見できて嬉しい」とコメント。「これからも想像もしたことないような変なゴカイの新種を見つけられればと思う」としている。