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東京科学大・大竹尚登理事長インタビュー 国際卓越研究大学目指し 「世界トップクラスの科学大学に」

東京科学大学の大竹尚登・理事長

昨年10月、東京工業大学と東京医科歯科大学が統合して「東京科学大学」が誕生した。同大の大竹尚登・理事長に話を聞いた。統合の意義とは、世界で最上位の科学大学になるためにどのように動いていくのかー。

――統合の意義や背景を教えてほしい

まず1つは、新型コロナウイルス感染症禍で単独の大学でできることに限界を感じた。統合する前の東京工業大は理学・工学に強みを持っていたけれども、患者は支援できなかった。東京医科歯科大は新型コロナの重症患者を受け入れた一方、ワクチンを開発するまで至らず、広い分野で他の研究機関と連携する必要性を互いに感じていた。

2点目に社会や世界の大学と競争していくことを考えると1校の力のみでは不足していると感じていたところはあると思う。実際、QS世界大学ランキングの歯学分野で東京医科歯科大が4位であったり、エンジニアリング分野で東京工業大が91位と各分野で評価されるてはいるものの、総合ランキングでも高めていく必要がある。

――統合によって生まれてくる東京科学大学の強みは

理工学と医歯学をそれぞれ山の頂上に例えるとすると、大学統合によりその間に橋をかけたということ。これにより、単なる医工連携だけでなく、新たな研究分野も生まれていくだろう。例えば、宇宙物理に医学が関わることにより火星で生活するための、生存圏の科学についての研究にもつながっていくだろう。そのあたりは東京科学大の強み。

現状でも、45テーマで、医歯学系と理工学系の研究者が連携している。大学がファシリテートしたものだけではなく、若手研究者が自発的に始めたものが出てきていることはすばらしい。今後も続いていくことが十分に期待できる。また、学生もすでにサークルなどで連携している。

記者からの質問に答えている大竹理事長

――世界トップクラスの科学系総合大学を目指すと聞いている。そのためにはどうしたらよいのか

まずは、学内を融合して新しい文化を作ることが大切だと思う。フラットな関係を構築して、その上で研究力を向上させていきたい。すでに世界トップクラスの分野もあり、主観としては今でも世界と伍してはいるが、よりプレゼンスを高めていきたい。

あとは、基金を積んでいきたい。日本の数十から数百億円とアメリカの兆円規模のお金では開きがある。例えば、ワクチンを開発したいとなった時に、そこに投入できる金額やリソースも異なってしまう。国際卓越研究大学の採択を目指し、強化していきたい。

――海外の優秀な研究者の呼び込みや博士人材の育成について教えてほしい

海外の研究者を長期で招へいし、研究してもらう環境を整えたい。これまでも呼び込んできたが、長期となると、その家族のことも考えていく必要があり、家族としての生活環境を充実したものにしたいと考えており、その支援もしないといけない。

海外では日本と違って博士号を持って一人前の研究者だという文化がある。世界標準となるためにも博士号を持つ人材を増やしたい。そのための、方策として学びながら収入を得られ、待遇も同年代の社会人並にしないといけないと感じている。

――今後の抱負は

まずは東京科学大学の名前を国内だけでなく、海外にも知ってもらいたい。各キャンパスで意見交換を行う「タウンホールミーティング」では、応援されることもあるが、指摘されることもある。例えば「施設に不備がある」との意見では、実際にキャンパスで現場を見て実感することもあった。しっかり意見交換をし、改善していきたい。そして、世界トップクラスの大学に向かって進んでいく。

長いスパンの話としては、現在の科学でどれくらい宇宙全体について分かっているかと問われたときに、質量で言えば全体の4%程度しか人間は理解できていないとされている。その数字を伸ばすことに大学として貢献していきたいし、新たな学問領域や未知分野の探求をけん引する大学になりたい。