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阪大ELSIセンターとPwCコンサルが共同研究 「責任ある量子技術開発」のイノベガバナンス構築目指し

大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)とPwCコンサルティング合同会社(東京都千代田区)は、9月1日から共同研究を実施している。〝責任ある量子技術開発〟にかかわる課題とステークホルダーを特定し、継続的議論の為のフレームワーク確立を見据えたアーキテクチャの構築を進める。

■「量子技術開発」にはELSIアプローチが必要不可欠

〝責任あるイノベーション〟は、「倫理的、法的、社会的課題(ELSI: ethical, legal and social issues)」を十分に考慮しながら、公共の利益のために新技術を開発する重要なプロセス。技術が倫理的に許容され、経済的、社会的、環境的な持続性を保証するものであるために、イノベーションのさまざまな段階に関わる全てのステークホルダーに対し、実践的行動を求めている。

量子技術は、未だその多くが研究開発段階にあるが、近い将来、量子駆動システムや製品、素材の目覚ましい進歩が期待されている一方で、世界中で人々の生活だけでなく政治・経済的バランスにも大きな影響を与えるであろうと危惧されている。量子技術の社会実装を加速するためには、その「倫理的、法的、社会的課題(ELSI)」が研究開発段階において十分に議論、検討され、適切な対応が取られていなければならない。

このように、量子技術は、「先制型(社会影響と責任を予測し、規制や適切な管理方法を検討する)」ELSIアプローチを必要とする点が過去の多くの科学技術と異なっている。

今回の共同研究では、海外での議論の動向を調査するとともに、日本の文化的、社会的背景を考慮し、その上で、先制型ELSIアプローチのアーキテクチャをデザインし、技術が社会実装された後の対応型ELSIアプローチを含めた継続的議論のフレームワーク構築の実現に取り組む。

具体的には①海外における「責任ある量子技術開発」に係る議論・枠組みの調査分析、②日本における「責任ある量子技術開発」に関連する課題の構造化‐を実施する。さらに、◎3課題解決に向けたステークホルダーの特定と最適な議論構造の検討、④継続的議論に向けたアーキテクチャのデザイン―といったことで連携協力する。