(上)プリスティオンクス・パシフィクス(下)カエノラブディティス・エレガンス
広島大学の中山賢一博士研究員と奥村美紗子准教授らのチーム15日、目を持たない線虫「プリスティオンクス・パシフィクス」(P.パシフィクス)が光を感知し、そのための神経の存在を明らかにした。14日付の米学術誌の電子版に掲載されている。
線虫は水中や土壌、植物などさまざまな生息域を持つ。1億種以上が存在するとされる。眼を持たないにもかかわらず、光反応が確認されており線虫の「カエノラブディティス・エレガンス」(C.エレガンス)以外の線虫では、どのように光を受容しているのか分かっていなかった。
研究チームはP.パシフィクスとC.エレガンスの光反応を比較。P.パシフィクスは青色や紫外光などの光に忌避行動を示し、C.エレガンスよりもその度合いが強いと判明した。光を避けるための神経伝達物質を探したところ、GABAとグルタミン酸が必要だったという。
さらに、頭部の感覚神経「アンフィドニューロン」の働きを阻害したところ、P.パシフィクスの光に対する反応が小さくなり、それらニューロンが光受容細胞だと示唆されている。
研究チームは「通常、暗闇に生息する線虫であっても光受容のメカニズムが多様に進化している可能性をほのめかしている」と分析。「寄生する線虫も多く存在し、人間社会に被害をもたらしている。新たな駆除法に関わる研究が加速することが期待される」とコメントしている。