東京薬科大学(東京都八王子市)は今年度、東京医科大学病院との連携のもと、ワクチン接種実習を薬学部4年次での新たなカリキュラムとして開始した。東京医科大病院との連携により実現し、同病院の感染制御部長である渡邉秀裕教授と小林勇仁講師を指導者として招へい。実習を通じ、医療行為の技術やワクチン接種の手技、感染予防・医療衛生だけでなく、命の大切さ、医療倫理観や医療に対する姿勢を身に付けることが期待される。
2019年末から続くコロナ禍で、新型コロナワクチン接種の担い手として、医師、看護師、歯科医師をはじめ、医師等を確保できない場合に限定して臨床検査技師や救急救命士が認められているものの、一部地域ではワクチン接種の担い手不足が問題となっていた。
このため、薬剤師もワクチン接種の担い手とする構想が上がりましたが、実践経験の不足を理由として見送られた。
この現状を踏まえ、日本私立薬科大学協会は、薬剤師がワクチン接種に参画するためには実習経験を積む必要性があるとし、昨年5月19日付で加盟大学に対してワクチン接種に関する注射手技の実習を導入するよう要請した。
東京薬科大では、この要請に応える形で、ワクチン接種実習をカリキュラムに導入。薬学部4年次に行われる「実務実習事前実習」で、4年次生の実習グループ(9グループ、総数約 420名)それぞれに実施した。
■薬学部での医療実習は国内でもレアケース
実習では、ワクチン調製の練習後、東京医科大病院の医師である渡邉教授、小林浩志の指導の下、構造的に腕を模したシミュレーターパッドを使用して正しい筋肉注射の方法を学ぶ。また、皮膚のシミュレーターパッドを用いた皮下注射の実習も行われる。実習では、患者への声掛けや接種する際の患者との位置関係、感染予防上の注意点についても修得。学生は実際の接種手技を習得し、ワクチン接種の実践経験を積むことができる。
今回のように医師を招聘した医療実習は、東京薬科大としては初の試みとなる。また、薬学部で医療実習を実践するのは国内でも非常に稀なケースといえる。この連携によって、薬学部の学生たちは医師の指導の下で実際の医療行為を学ぶ貴重な機会を得ることができる。