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九大、国連「脱GDP」に向けた新国富報告書発表 163カ国の包括的な豊かさに関する世界的評価

■ポイント□

◎GDPを補完し経済の持続可能性と人々の幸福を把握する指標による世界の評価を発表

◎自然資本、人的資本、人工資本の総価値(新国富)を考慮した包括的な豊かさの測定

◎不平等、ネイチャーポジティブへの社会づくりについて示唆

国連が国内総生産(GDP)を補完する新しい指標づくりに取り組んでいる。〝GDPを越えて(脱GDP、ビヨンドGDP)〟がグテレス事務総長のキーワード。G7サミットでは「30年までに生物多様性の減少傾向を食い止め、回復に向かわせる」という目的を合意。2022年には企業の事業活動がもたらす自然資本へのリスクと機会を適切に評価、対外的に報告できることをめざす自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が発足するなど、企業の事業活動がもたらす自然資本へのリスクと機会を適切に評価、対外的に報告することがグローバルに求められている。

環境を含めたESG(環境、社会、企業統治)の取り組みの重要性は増しており、製品だけでなく、原材料を供給するサプライチェーンまで含めての取り組みが求められています。

こうしたなか、2014年から代表を務める九州大学大学院工学研究院の馬奈木俊介主幹教授がとりまとめた「Inclusive Wealth Report 2023」が国連(担当・国連環境計画(UNEP))から発行された。

このレポートでは、不平等と自然資本との結びつきに焦点を当て、自然の喪失が深刻な悪影響を与えることを強調。また、自然資本、人的資本、人工資本を統合した新国富が、国や世界の開発と経済の進歩を評価するための合理的な指標であることを示している。

同時期、日本学術会議から、産業界に向けて学術を包括的に報告する「サステナブル投資による産業界のインパクト」(代表・馬奈木俊介)が公開された。SDGsの評価については政府から具体的なガイドラインが提供されておらず、この報告の中でも、非財務情報を評価する包括的な指標の重要性に触れ、国内企業の対応を提言している。

G20(金融・世界経済に関する首脳会合)でも、同様の新指標に向けた取り組みが行われ人的資本や自然資本に関する提言が行われている。

GDPでは測りえなかった、人々の幸福に資する自然資本をはじめとする富に関する現状を把握することで、人々が幸福で持続可能な社会づくりを促進することが期待される。

このレポートは今年8月に公開された。