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スマホアプリに搭載したドライアイ疾患特異的質問紙票によって収集した患者報告アウトカムの同等性を検証 順天堂大研究Gがランダム化クロスオーバー試験

■研究のポイント

◎スマホアプリに搭載した電子媒体のドライアイ疾患特異的質問紙票と紙媒体の質問紙票の同等性が示された

◎従来の紙媒体のドライアイ疾患特異的質問紙票による問診をスマホアプリによって代替できる可能性がある

◎スマホアプリに搭載した電子媒体ドライアイ疾患特異的質問紙票を遠隔診療やオンライン診療に活用することで、ドライアイの早期発見・早期治療の実現が期待できる

順天堂大学医学部眼科学講座の梛野 健研究員、猪俣 武範准教授らとInnoJin㈱の共同研究グループは、ドライアイ研究用スマートフォンアプリケーション(スマホアプリ)「ドライアイリズム®」(※)を用いて、スマホアプリと紙媒体のドライアイ疾患特異的質問紙票によって収集された結果の同等性を検証した。

顕彰の結果、従来の紙媒体のドライアイ疾患特異的質問紙票による問診をスマホアプリによって代替できれば、遠隔診療・オンライン診療でのドライアイ自覚症状の適切な評価や、ドライアイ患者の早期診断、早期治療を実現できる可能性があることが明らかになった。

この研究はデジタルヘルスに関する学術雑誌Journal of MedicalInternet Research誌に掲載された。

※ ドライアイリズム® :2016年10月に順天堂大医学部眼科学講座が開発したドライアイ研究のためのスマートフォンアプリケーション。ドライアイの症状、瞬目(まばたき)の計測が可能で、QoLや労働生産性への影響などの評価ができる。ドライアイリズム®の商標は順天堂大学発ベンチャーであるInnoJin㈱が保有する

■研究の背景

ドライアイは国内で2000万人以上が罹患する最も多い眼疾患の一つで、超高齢社会、デジタル社会の進展により今後も増加すると予想されている。また、ドライアイによる眼の乾燥感や不快感といった症状は、人生⾧期にわたり視覚の質や集中力、労働生産性を低下させ、多大な経済的損失を引き起こすことが問題となっている。

ドライアイの症状は乾燥感だけでなく、まぶしさや眼精疲労、視機能低下など多岐にわたるため、自覚症状を有していてもドライアイと診断されず、適切な治療を受けられずにいるドライアイ未診断者が多数存在することがわかっている。

また、ドライアイと診断されたとしても、仕事や学業、日常生活動作の低下や新型コロナウイルス感染症の蔓延のために通院の継続が困難という社会的問題がある。一方で、ドライアイは重症化すると角膜障害や視力低下などを引き起こす可能性があるため、早期診断・早期治療が求められている。

現在、国内でのドライアイの診断や治療では、紙のドライアイ疾患特異的質問紙票を用いた自覚症状による評価が行われている。近年は遠隔診療やオンライン診療の普及が進んでおり、仕事や学業による受診や通院が困難という課題の解決が期待されているが、従来の紙の質問紙票による問診は遠隔診療やオンライン診療には適しておらず、電子化されたドライアイ疾患特異的質問紙票が必要とされている。

しかし、電子化されたドライアイ疾患特異的質問紙票の従来の紙の質問紙との同等性はこれまであきらかになっていなかった。

このため、遠隔診療・オンライン診療において使用可能な電子媒体のドライアイ疾患特異的質問紙票を開発するためには、従来の紙媒体のドライアイ疾患特異的質問紙票との同等性を証明する必要があった。