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科博がクラファンを開始 目標1億円、コレクションの収集・保存に活用

国立科学博物館は、わが国のナショナルコレクションとして質‧量ともに世界に誇れる標本‧資料の充実のため、目標金額1億円のクラウドファンディングを8月7日に開始した(プロジェクトページURL:https://readyfor.jp/projects/kahaku2023cf)。プロジェクトタイトルは『地球の宝を守れ―国立科学博物館500万点のコレクションを次世代へ』。目標金額は1億円で、クラファン形式は購入型・寄附金控除型/All in形式。募集期間は11月5日午後11時まで。資金使途は「コレクション収集・保全費用」。5000円〜100万円まで40コース以上を用意している(※公開期間中も追加予定あり)。応募開始から9時間後には1億円を達成するなど、関心の高さがあらためて示された。

1.国立科学博物館と標本・資料

科博は、〝地球や生命の歴史と現在、科学技術の歴史〟を研究するため、標本・資料を収集している。収集の対象は動物、植物、菌類標本、生きた植物、鉱物、化石、人骨、科学技術史資料など多岐にわたり、60名を超える各分野の研究者がこれらの標本をもとに日夜研究に励んでいる。

現在、科博の登録標本・資料数は500万点以上にのぼり、その数は毎年数万点ずつ増えている。上野にある博物館の館内に展示している標本・資料は2万数千点で、そのわずか1%未満にすぎず、多くは茨城県つくば市の筑波研究施設敷地内にある専用の収蔵庫に保管されている。

500万点という数字は、日本国内では多いが、例えばロンドンの大英自然史博物館は約8000万点、アメリカのスミソニアン国立自然史博物館では約1億5千万点の標本を所蔵するなど、海外の主要な自然史博物館と比べると桁が一つ、あるいは二つ少ないのが現状。

科博のミッションは、「調査・研究」、「展示・学習支援」、さらに、「標本・資料の収集・保管・活用」の三だが、特に、当館の事業の根幹である「標本・資料の収集・保管」は資金的に大きな危機に晒されている。

2.なぜ、たくさんの標本・資料を収集し続ける必要があるのか?

生物標本の場合、その生物が〝いつ、どこに、どのような〟状態で生息していたか示す資料となる。より多くの標本を残すことで、絶滅の危機に瀕する生物の過去の生息域や、周囲の自然の状態を調べることができる。

さまざまな時代に様々な場所で収集された標本・資料を幅広く収集することで、データをより多く積み重ねることができ、調査・研究に基づく仮説の確からしさを高めることが可能となる。

さらにDNAの解析技術の進展などにより、従来は解析し得なかった古い標本から新たな発見につながる可能性もある。過去に遡って標本・資料を集めることはできないため、〝手にすることができるうちに〟収集・保管することが重要。

3. 収蔵庫の現状

標本・資料は通常、収蔵庫の棚に整理したうえで保管されることで、分類の研究に利用され、新たな発見などにつながる。しかし、すでに筑波地区の収蔵庫は収蔵スペースの確保が難しい状況となっている。また、受け入れたものの人手不足で整理できず、箱に入れられたまま廊下に山積みで保管されているものもある。

また、膨大な数の標本・資料を万全のコンディションで保つには、適切な収蔵保管環境を整える必要があるが、広大な収蔵庫では、空調設備や標本登録作業を行う人材配置など、維持・管理にも多くの資金を要すため、資金不足を理由に受け入れをやむなく断っているコレクションもこれまで多く存在するという。