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電圧によるスピンを50倍以上増大 反強磁性体スピンを制御 阪大など5団体

大阪大学と名古屋大学、三重大学など5機関からなる共同研究グループは、反強磁性体であるクロム酸化物(Cr₂O₃)薄膜に対して、低消費電力・高速駆動が可能な電圧によるスピン制御技術を開発した。また、その制御効率を50倍以上に高効率化することに成功している。

研究グループはCr₂O₃に対してスピン情報が強く表れるナノメートル領域まで薄くすることで反強磁性体のスピンを制御できると明らかにしたが、デバイス適用に向けては低電力駆動に必要な電圧による制御が必要であった。

研究チームは電圧によって磁石イオンのスピン状態を変化させることで生じる「電気磁気効果」に注目。この効果を利用してCr₂O₃薄膜のスピンを電圧で制御することを試みた。その結果、磁場を変化させず電圧の変化のみで反強磁性体のスピン方向を反転できることを明らかにしている。

スピン反転条件は電圧や磁場の強さによって変化させることができ、その変調効率が従来の強磁性材料を用いた場合と比較して、50倍も高効率であると判明している。また、電圧の向きにより、情報の「1」と「0」に対応するスピンの向きを選択できることも確認し、将来的なメモリ動作の可能性も実証した。

研究グループは「この成果は、電圧で駆動できるスピン材料の開発指針に関する重要な知見を提供するものであり、この知見に基づき材料探索を進めることで、より高い性能を有する電圧駆動型のナノスピン材料を見いだせる」としている。