理化学研究所と順天堂大学、東京大学の共同研究グループは、自閉スペクトラム症(AS
D)のマウスを作製し、行動や遺伝子発現の変化が薬剤投与で回復することを明らかにし
た。英科学雑誌「モレキュラー・サイアトリー」の26日付オンライン版で発表されてい
る。
自閉スペクトラム症は自閉症やアスペルガー症候群などを含む発達障害で、100人に1
人が発症するとされる。だが、その治療法はまだ存在しない。
研究グループはASDに関連する「KMT2C遺伝子」に着目。この遺伝子を欠損する改
変マウスをクリスパー・キャス9(CRISPR/Cas9)システムで樹立した。変異
マウスは、社会性や柔軟性の低下といったASDに見られる行動を現し、モデルマウスと
して妥当と考えられる行動変化を示した。
変異マウスを解析すると、有力なASD関連遺伝子が偶然以上の確立で増えていた。また、
関連が示唆されるシナプス機能に関わる遺伝子群の発現も上昇していた。
変異マウスが薬剤投与で回復するかを探るため、ヒストン脱メチル化酵素「LSD1」の
阻害剤を変異マウスに投与。行動試験を行ったところ、社会性の低下が回復しておりAS
D症状の一部が回復すると発見している。
研究グループは「ASDおよび他の精神神経疾患の病態解明および治療法開発に向けて、
今後の展開が期待される」と講評している