名古屋大学と北海道大学、京都大学の共同研究グループは、メダカを用いて卵の極性(不均一性)が作り出される仕組みを明らかにした。性が決まる前に生殖細胞は卵を作る準備をしている事象を解明し、脊椎動物の身体の軸構造形成がいつ始まるのかを示す初めての結果だという。
研究グループは生殖細胞が卵と精子に運命付けられるタイミングで、微小管という分子の動態が大きく変化していることを見つけた。そこで微小管を染色すると、生殖細胞内にドーム状の形をした中空の微小管構造(微小管ドーム)が存在することを確認した。
実験によると微小管ドームは、生殖細胞が卵に分化する際には安定して維持されるのに対し、精子に分化する際には消失することが分かった。加えて、このドームは卵の極性を作り出すのに必要な「バルビアーニボディ」という構造の基盤となっていることが判明している。
この結果は、メスもオスも最初は卵を作るための準備をしているため、生殖細胞の性の初期設定はメス型であることを示唆している。同時に本研究は、微小管ドームが卵の極性を作り出すプロセスを発生初期に初めてさかのぼり示すことができた。
研究グループは「生殖細胞が性決定前から卵を作る準備をしていたことは、『性の初期設定はメスか、オスか』という生物学的問いに対して『初期設定はメス』という1つの見解を示した」とコメントしている。