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高血糖下の細胞研究は酸素濃度に注意 東北大×農工大が解明 正常な血管維持のための内皮細胞の環境応答

東北大学と東京農工大学の共同研究チームは、血管の内側を覆う血管内皮細胞単層の周囲のブドウ糖(グルコース)の濃度と酸素濃度が細胞の動態に与える影響と変化のメカニズムについて研究した。これは血管恒常性の維持に関する重要な知見であり、将来的には血管疾患の発症メカニズムの解明やその予防法の創成につながるとしている。

研究では血管内皮細胞の正常な状態を維持するための遊走に対し周囲のブドウ糖濃度および酸素濃度が与える複合的な影響とそのメカニズムについて調べることを目的に、マイクロ流体デバイスを用いて細胞実験を行った。

その結果、血管内皮細胞の行動速度は、酸素が豊富にある常酸素条件(酸素濃度21%)では高グルコース環境において増加したのに対し、低酸素条件(酸素濃度0.3%)では高グルコース環境下でも減少した。

さらにミトコンドリアによるエネルギーを得るためのATP(アデノシン三リン酸)産生を阻害した際も同様に、高グルコース環境下にあっても移動速度は遅くなった。

血管内皮細胞の移動に与える影響は、ブドウ糖よりも酸素の方が支配的であると考えられ、そのメカニズムには細胞内におけるATP産生が関わっていることを突き止めている。

研究グループは「これは血液中の環境因子の変化に対して血管恒常性が維持されるメカニズムの解明につながる重要な知見」と評している。