東京大学と新潟大学の研究グループは、疾患による複数の遺伝的変質「ポリジェニック効果」を定量化する数理モデルを日本人アルツハイマー病に対して初めて開発した。遺伝リスクが定量可能なPRSで個人を層別化することにより、リスクに応じた個別化医療が推進されると期待される。
アルツハイマー病は認知症の中で最も頻度が高い疾患だ。アルツハイマー病の最大の危険因子は老化だが、加えて特定の遺伝的バリアントを生まれつき多くもっている人は発症リスクが高いことが知られている。近年、遺伝的リスクが定量可能なPRSが注目されるが、日本人アルツハイマーへの有効性は不明であったため、検証した。
研究ではこれまで集積された日本人アルツハイマー病患者139人と健常高齢者145人のゲノムデータを用いてアルツハイマー病のPRSモデルを構築した。モデルで算出したPRSは健常者と比較して、アルツハイマー患者が有意に高いと判明している。
さらに、PRSは認知機能や原因たんぱく質の「タウタンパク」の髄液中濃度とも関連することが分かっている。
研究グループは「開発した日本人のアルツハイマーPRSモデルはアルツハイマー病の発症リスクの推定や、アルツハイマー病治療薬が奏功するグループを見極める層別化に向けた応用が期待される」と説明している。