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植物も子育てに悩む? 総研大と埼玉医大研究チームが数理モデルで栄養供給の進化を解析 遺伝子バランスが影響 

総合研究大学院大学と埼玉医科大学の研究チームは、母親から子への栄養供給を数理モデル化して進化について解析した。栄養共有に関わる母と父の遺伝子のバランスや子どもの数が進化パターンに影響を与えるとしている。

研究では、植物や藻類で観察される「世代交代」という現象に着目。コケ植物や紅藻類などで観察される、母親(配偶体)による子(胞子体)への栄養供給を子育ての文脈で数理モデル化し、その進化について解析した。

それによると、母親である雌性配偶体のみが栄養供給量をコントロールした場合、母側の立場で考えたときの繁殖成功度を最大化する供給量が進化する。このように、胞子体の数が少ない場合や母の影響力が強いときには、ある進化的な意味で安定した栄養供給量が進化する。

一方で、胞子体の数が増え、さらに父親の影響力が強くなると異なる進化パターンが生じた。雌性配偶体からの栄養供給量が増えるほど胞子の生産量が増えるという関係のもとでは、進化的分岐と呼ばれる現象により集団に多型が生じる。最終的に栄養供給量が非常に高い値に進化するという。

研究チームは「母親由来の遺伝子にとって望ましい栄養供給量と、父親由来の遺伝子にとって望ましい栄養供給との間に差が生じ、結果としてそれが進化における対立を引き起こす」と説明。「配偶体と胞子体の世代交代という現象において、個体間相互作用や性的対立といった行動生態学におけるコンセプトが重要な役割を果たす」としている。