産業技術総合研究所の宮嶋佑典研究員らの研究グループは、メタンと水の結晶「メタンハイドレート」が分布する⼭形県酒⽥市沖の海底で、微⽣物がメタンを消費する速度を推定した。生育に酵素を必要とする微生物とそうでない微生物がメタンを使っていることを発見した。メタンハイドレート開発に伴う環境影響評価に貢献する可能性もある。
海底に⽣息する微⽣物が、メタンの消費に重要な役割を果たしていると考えられているが、これら⽣物の現場での活性やメタン消費速度については、定量的な理解が進んでいない。研究では深海の微⽣物によるメタン消費の機構解明に挑んだ。
グループが行った海底の遺伝⼦・脂質解析の結果によると、酸素を利⽤してメタンを消費する「好気性メタン酸化バクテリア」と酸素がない環境でメタンを消費する「嫌気性メタン酸化アーキア」が、微小生命体が集まる微⽣物マット直下でのみ共存していた。
またメタンの消費速度を推定するため、海底に近い温度で培養開始時に酸素を与えた場合と無酸素の場合を比較した結果、培養の初期において、前者のメタン消費速度は後者の4倍近いことが判明している。
産総研は「他の海域についても、微⽣物のメタン消費速度を⾒積もることで、海底におけるメタン収⽀をより詳細に理解できる」と説明している。