文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
「絶滅」が与える生体ネットへの影響、生態系の柔軟性を支える種を探索 京大

京都大学の東樹宏和教授らの研究グループは、多様な生物種が織りなす相互作用ネットワークに着目し、生態系全体の柔軟性を高める役割を果たす種を探索する手法を開発した。

生態系内で生物たちは、複雑なネットワークでつながっている。この中で、絶滅する種が現れると、関係があった他の種にまで影響が及び、生物群集全体の構造が崩れる。だが、多種とのつながりが柔軟な生き物がいれば、連鎖的な崩壊を防ぐ働きを担える。変動の中で中核的な役割を果たす種が、存在するかを探る実証研究は遅れていた。

今回の研究では明らかにした膨大な相互作用ネットワークの情報を分析し、柔軟性に寄与する種を探索した。草原生態系を対象とした先行研究で、50種のクモ(捕食者)と約1000種の餌生物(被食者)の関係性で構築されるネットワークの8カ月間に渡る時系列変化が解明されていた。それを参考にアルゴリズムを構築している。

その結果、季節によって餌生物種を柔軟に変化させる傾向の強い捕食者種や時期によって異なる捕食者に利用されやすい被食者種が明らかになっている。特に、被食者はトビムシやユスリカといった植物遺体や植物遺体を分解する真菌類を食べる性質の節足動物が柔軟性に強い効果をもたらしていることが推測された。

研究グループは「相互作用ネットワークの柔軟性を高める働きをする種を見いだすことで、生態系を再生していく道が見えてくる」と期待を寄せている。