京都大学と熊本大学の共同研究により、熊本地震前後の地下水位を分析した結果、水位は地殻歪(ゆが)みを感知するセンサーとして機能していると発見した。特に主要な帯水層である砥川溶岩での変動が歪みと関連することが判明している。
研究グループは熊本地震前9年間とその後7年間の地下水位データを解析。降水量と気圧、地球潮汐を水位変動(残差成分)の要因としたモデルを作成し、それらで説明できない動きは地球歪みに関連すると仮定した。
計17地点の地下水観測井戸のうち、4箇所が残差成分の大きな井戸であった。残差成分は、11年の東日本大震災の発生後は低下し続け、14年頃に増加に転じて16年の熊本地震まで続けた。これは地震によって地中で負荷をなくす応力解放によって、地殻の歪みの増大に転じたためと解釈した。
また、ボーリングデータから作成した帯水層の3次元数値モデルと観測井戸を重ね合わせたところ、これら4箇所での地下水注入部(ストレーナ)は多孔質で透水性の高い砥川溶岩と先阿蘇火山岩類の上部に位置していた。
歪みとの関連が明瞭な残差成分を示した井戸は、熊本地震の発生源となった布田川断層帯までつながり、砥川溶岩からなる帯水層にストレーナが設けられていることも分かっている。
研究グループは「研究で見いだされた特徴が、他の地域でも見られるかを確かめるために、観測データの蓄積や残差成分の解析を含むデータの解釈を深め、地下水位-地殻歪み関係の普遍性と精度を高める今後の研究発展を期待する」としている。