物質・材料研究機構(NIMS)は、電子顕微鏡観察から得られるネオジム(Nd-Fe-B)磁石の微細組織を有限要素モデルに取り込み、外部磁界の影響で磁石が減磁する過程を数値シミュレーションで再現することに成功した。
風力発電、モビリティー用途で使用されるモーターは高性能永久磁石に大きく依存しており、その中でもネオジム磁石は最も強力で需要が増大している。だが、ネオジム磁石の保磁力は、そのほとんどが物理的限界をはるかに下回っている。
研究では、超微細粒ネオジム磁石の微細組織を顕微鏡で観察し、それを大規模モデルで再構成する新しい方法を提案した。このアプローチは、走査型電子顕微鏡(SEM)と集束イオンビーム(FIB)による研磨を組み合わせて取得した多数の画像データを、高品質な3次元モデルに変換するというトモグラフィーに基づくもの。
トモグラフィーとシミュレーションの組み合わせは、現実の現象を仮想空間に構築するデジタルツインの実現であり、先進的なネオジム磁石の保磁力を再現し、そのメカニズムの説明を可能にした。さらに、磁石の強さを支配する微細組織の特徴も明らかにしている。
研究グループは「特定の用途に必要とされる磁石の要求特性を入力すれば、データ駆動型の予測を通じて、その用途に最適な磁石の組成、プロセスの詳細、微細組織等を提案できる」と説明。磁石の開発期間を著しく短縮できるとしている。