神戸大学と京都大学の共同研究グループは、データ分析によりシナプスに局在する主要なたんぱく質「FAM81A」を発見した。これは液-液相分離によって細胞内で液滴状の構造を形成し、神経伝達に関わるシナプスの分子を集積させる性質を持っていることが分かった。オープンアクセス学術誌「ピーロスバイオロジー」に7日付で掲載されている。
解析でシナプス後部の細胞膜直下に存在する「シナプス後肥厚(PSD)」に局在するたんぱく質が1000種類以上報告されている。研究では、PSDにあるたんぱく質の中で、主要であるが機能が未知の分子の探索を行った。
たんぱく質はその機能が明らかになった際に、何らかの名称がつけられる。そのため、誰も名前を付けていないたんぱく質を研究グループはリストアップした。それらのうち、検出頻度最上位のたんぱく質が「FAM81A」であった。
解析を進めると、FAM81Aは細胞内において液状の構造体を形成すること、そしてこれがたんぱく質の液-液相分離によって形成されていると分かっている。これは試験管内においても、他の主要な後シナプスたんぱく質「PSD-95」「SynGAP」「GluN2B」と相互作用し、液滴を形成すると示されている。
また、FAM81AがPSDにおいて、後シナプスたんぱく質を集積させることでシナプスの強度を正に制御していることも突き止めている。
研究グループは「動物を用いた実験によりFAM81Aが生体内で生理的条件下においてどのようにシナプスに影響しているかを研究することで、シナプスの機能や可塑性の分子メカニズムの理解が深まると考えられる」としている。