産業技術総合研究所の菊池義智研究グループ長らはフランス国立科学研究センター(CNRS)と共同で、害虫が腸内微生物の力で病気に強くなる仕組みを初めて解明した。害虫に対する農薬の殺虫効率やり患率を改善する上で重要な知見だ。
農業における害虫の病原微生物の活用は化学農薬に代わる環境負荷の低い害虫防除法の切り札として注目されている。だが、害虫の免疫系には不明な点もあり、特に農耕地環境において害虫がどのように病原菌に対抗しているのかについてはほとんど分かっていなかった。
グループが大豆の害虫「ホソヘリカメムシ」の免疫機構を調査したところ、腸内微生物の一部が消化管の上皮細胞を突破し、カメムシの体内で貪食細胞や免疫細胞と相互作用することで全身的な免疫反応を引き起こすことが分かった。さらに、免疫系が活性化されたカメムシは、病原菌が感染しても高い生存率を示すことも判明している。
菊池グループ長らは今後について「病原菌への耐性に関わる腸内微生物の機能やそのメカニズムを解明し、昆虫病原微生物をはじめとした生物農薬の効果の向上に役立つ研究を進める」と力を込めている。