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〝漆黒の闇〟に潜む謎を量子ビームで解析  歴史の謎の解明に期待 原子力機構研究G

日本原子力研究開発機構などの研究グループは、特殊な能力を持つ量子ビームを駆使することで、可視光では透過できない漆のナノ構造を解明することに成功した。〝漆黒の闇〟に潜む謎。この手法を歴史的な資料に適用することで、これまで明らかになっていなかった歴史の謎も解明できるかもしれない。

漆は、耐水性や耐薬品性に優れた稀有な天然塗料。さまざまな日用品や装飾品の塗装に用いられてきた。近年では漆を利用した新たな材料開発も注目されているが、その構造や反応はほとんど解明されておらず、何故黒色になるかは現代でも明らかにされていない。

漆は0.3%以下の低濃度の鉄を添加するだけで黒色となる。これまでの分析方法ではこのような濃度の鉄イオンを安定的に検出することは困難であった。そこで、大型放射光施設「スプリング8」など世界最高レベルの実験施設を用いて、漆内部の精密な測定を可能にした。

実験では黒漆中の鉄イオンの化学状態を放射光で決定。また、X線と中性子の特色を利用し、その透過率の差で漆の構造を観る手法を確立した。この結果から、黒漆がなぜ黒くなるかの科学的メカニズムを初めて解明した。

その仮説として、生漆に鉄イオンが添加されると漆の主成分「ウルシオール」のベンゼン環の部分が活性化され、そこの部分で反応が進む。これにより、ベンゼン環部位が連なっていく。可視光が吸収されやすくなり、黒色になるという。

研究グループは「漆の優れた物性がどのよう構造から発現しているのかを明らかにすることで、今後自然に優しい優れた次世代材料の開発が期待できる」としている。