九州⼤学など4大学のグループは、⾃閉症患者におけるCHD8遺伝⼦上のアミノ酸が別のアミノ酸に置換するミスセンス変異に対して予測スコアを適⽤した。⾼スコアの変異は⾃閉症の発症に寄与している可能性が⽰唆している。この知見は発症プロセスに基づく治療法の開発に貢献できそうだ。
CHD8遺伝子は自閉症患者の最も多く変異が報告されている遺伝子。これまでは⾃閉症の発症原因としてCHD8たんぱく質の量的減少に着⽬した研究がほとんどで、CHD8たんぱく質の機能障害を⽣じる変異についての解析は⾏われていなかった。
ミスセンス変異に着目して分析するとその予測スコアが高いグループと低いグループに大別された。これらの変異がどのようなメカニズムで⾃閉症の発症に寄与しているのかを解明するために、代表的な複数の変異を細胞やマウスに導⼊し解析を行った。
その結果、⾼スコアの変異を取り入れた幹細胞では神経関連の遺伝⼦の発現が低下しており、神経細胞への分化が障害されていることが分かった。さらにこれらの変異を図ったマウスでは、不安の増加や社会性⾏動の異常などといった⾃閉症様の⾏動異常が⾒られることも判明している。
⾃閉症様⾏動の原因となった変異の中には CHD8たんぱく質の活性障害を伴うものとそうでないものがあると分かり、このことから⾼スコアの変異は多様な分⼦機序を介して⾃閉症の発症に寄与している可能性が⽰唆された。
⼀⽅で、検証した低スコアの変異は全てたんぱく質の活性や細胞の分化、マウスの⾏動に影響を与えなかったことから、これらは⾃閉症発症の直接的な原因ではないことが⽰されている。
研究グループは「CHD8遺伝⼦変異による様々な⾃閉症発症の分⼦機序が明らかになったことで⾃閉症の病因や病態の理解が進み、個別の発症メカニズムに基づいた適切な治療法の確⽴が期待される」と評価している。
この研究は、九大をはじめ金沢大、藤田医科大、長浜バイオ大の4大学の研究者によって行われた。