大阪大学の水口裕之教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞から1年以上培養できる腸管オルガノイドを作製した。また、それを経口投与医薬品の腸管における薬物動態評価系として応用し、その有用性を示すことに成功した。医薬品の安全で効率的な開発に貢献できそうだ。
水口教授らの研究グループはヒトiPS細胞から長期培養可能なヒト腸管オルガノイドを作製し、腸管評価系としての安定性と汎用性を高めた上で、その機能などを評価した。
その結果、オルガノイド単層膜は微絨毛構造やタイトジャンクション構造といった、生体の腸管にも見られる形態学的な特徴が観察された。
また、腸管に発現する主要な薬物代謝酵素「CYP3A4」は単層膜中で広域的に発現しており、「CYP3A4」や排出トランスポーター「MDR1」、腸管上皮細胞マーカー「VIL1」の遺伝子発現レベルは成人小腸と同程度であり、各種薬物代謝酵素分子種の活性は成人小腸に近い傾向を示していることが分かった。
また、ヒト腸管オルガノイドは1年以上増幅させながら継代培養が可能であり、1年以上培養を続けたヒト腸管オルガノイドを単層膜化しても腸管機能には変化がなく、高い機能をもった腸管細胞の供給が可能であった。
水口教授らは「本培養系は従来系と比較してヒト生体に近い機能を有していることに加え、培養系としての安定性と汎用性を兼ね備えていると考えられる」と評価。「ヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞を使用した医薬品の吸収や代謝、排泄試験が加速していくことが期待される」とコメントしている。