京都大学の福間慎吾准教授らのグループは、降圧剤治療中で心血管病(心筋梗塞、脳卒中、心不全、末梢動脈疾患)の10年発症確率が1割を下回る低リスク患者において、治療中低血圧が心血管病の新規発生に与える影響を分析した。収縮期血圧は110ミリエイチジー以下まで下がっても心血管病が増えないと発見している。
グループは就労世代1000万人以上の健診データと保険請求データを分析した。2年間の健診で継続して降圧薬を内服していた患者で、心血管リスクが低い人たち約92万人を同定。治療中血圧と、その後に起こる心血管病(心筋梗塞、脳卒中、心不全、末梢動脈疾患の新規発生)との関連を解析している。
その結果、治療中の収縮期血圧が110ミリエイチジー未満であっても心血管イベントは増加しなかった。一方、治療中の拡張期血圧については60ミリエイチジー未満の場合に限り心血管イベントが有意に増加した。また、血圧が高いことは心血管病の増加と強く関連していた。
研究グループは「世の中に多く存在する低リスクの降圧剤治療中患者における適切な血圧管理の知見は、社会の重要な健康課題である心血管病を予防するためのアクションにつながる」と評価している。