名古屋大学と東京大学の研究グループは、高い耐光性と細胞膜透過性を兼ね備えた細胞を生きたままリアルタイムで可視化するための近赤外蛍光標識剤の開発に成功した。医学や創薬分野での貢献が見込まれている。
近赤外領域の光は多くの蛍光たんぱく質や蛍光標識剤と波長域が重ならないことから、多色で標的を染色するのにも有用だ。だが、近赤外蛍光色素は水溶性が乏しく、化学的な安定性が低いものが多いため、蛍光イメージングにはあまり利用されてこなかった。
研究では光に対する安定性に優れた近赤外蛍光標識剤を開発し、細胞膜透過性を評価した。その結果、化合物の3次元的な構造である立体化学が細胞膜透過性に大きな影響を与えることを発見。膜透過性を有する近赤外蛍光標識剤を用いることで、蛍光イメージングによる任意のオルガネラの特異的標識を達成した。
研究グループは「知見は、薬物の膜透過性に関しても重要な情報といえる」と説明。「新しい蛍光標識剤の開発だけでなく、創薬開発への応用も見込まれる」としている。