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光触媒を用いた実用的な還元的環化反応 北大教授らが開発に成功 クリーンな合成技術への発展に期待

北海道⼤学の佐藤美洋教授らの研究グループは、光電池に使われる光触媒と金属触媒「コバルト触媒」を組み合わせ、炭素を持つ分子「アルキン」とアルデヒド構造の分子「アルデヒド」を還元的環化させることに成功した。

ニッケル触媒を用いた還元的環化反応は発生する廃棄物が問題であった。そのため研究では、光エネルギーとコバルト触媒を⽤いた簡単でクリーンな代替法の開発を⽬指した。

光触媒とコバルト触媒、トリエチルアミン、⽔の存在下でアルキナールに可視光を照射して反応条件を精査。研究グループは最適な条件を⾒いだした後、さまざまなアルキナールに対して反応を適⽤した。重⽔素化実験、電気化学測定、蛍光分光法による滴定実験で反応メカニズムを推定している。

実験の結果、⽬的の5員環アルコールを得る条件を突き止めた。この最適反応条件を⽤いることで、多様な環構造をもつ6員環、7員環アルコールの合成にも成功している。この反応の添加剤は、必要最低限のトリエチルアミンと共溶媒の⽔のみであり、ニッケルを使った従来法と⽐べて廃棄物を⼤幅に削減できたとしている。

研究グループは「現時点ではLEDの光を利⽤していますが、太陽光を利⽤する光触媒や発電技術の発展とともに、将来的にさらにクリーンな合成技術へと発展する」と説明している。