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「細菌の群集が振る舞いで代替的な集団に遷移」 京大研究G実証 細菌構築の足掛かりに

京都大学の東樹宏和教授らの研究グループは、多様な細菌種で構成される群集が微細な種組成の揺らぎや各個体の振る舞いに左右された結果、少数の代替的な群集に変わり得ることを実証した。

研究では、ある細菌種組成の群集を大量に繰り返して培養し、培養した各反復における細菌種の頻度をDNA解析によって取得。反復間にどのような差異が現れるかを分析することで、細菌群集の遷移が持つ再現性に関する知見を得ることを目的とした。

土壌に由来する多種細菌群を人工的な8種類の培地に導入し、生物多様性を分析する「DNAメタバーコーディング」という手法で、12日間にわたって2日おきに細菌種組成の変化を分析した。培地に導入する際に、48の繰り返し群集を設け、それらの間に現れる違いを定量することで、細菌群集の遷移過程が持つ再現性を解析している。

その結果、一部の培地下では反復間でほとんど差が観察されなかったが、別の培地下では、各48反復が少数の異なる群集に移り変わる傾向が見られた。これは、30属以上の細菌からなる複雑な集団でも、決まったパターンの構造に変化することを示している。

東樹教授らは「細菌群集の制御に対して応用上の関心が高まっていることを踏まえると、その制御可能性や操作の再現性は今後大きな課題になっていく」と推測。「研究で得られた知見は、確率的な揺らぎに左右されづらい頑健な多種細菌群集を構築していくための足がかりになる」と力を込めた。

研究の概要。多数の繰り返し観察から見えた、反復群集が代替的な
群集へ遷移していく過程を示す