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二酸化炭素を固定化する器官「ピレノイド」 筑波大・北大研究チームが独自進化を発見

筑波大学と北海道大学の研究チームは、海産藻類「クロララクニオン藻」において、⼆酸化炭素(CO₂)を有機炭素に固定する細胞内⼩器官「ピレノイド」で働くタンパク質を明らかにした。ピレノイドは多く存在するが、藻類ごとに異なる道筋で進化してきたことが分かっている。

緑藻と珪(けい)藻の⼀部の種を除いて、CO₂を1カ所に集めるピレノイドで働くタンパク質(ピレノイドタンパク質)がどのような分子機構で働いているのかは明らかにされていなかった。

研究チームは8個の新規ピレノイドタンパク質を発見した。CO₂の濃縮に関連する炭酸脱⽔酵素やCO₂を固定化するルビスコの集合に関わるとされる「リンカータンパク質」の他、複数の機能未知タンパク質が含まれていた。

その多くがクロララクニオン藻に特有で、ほかのピレノイドタンパク質とは異なる種類であった。つまり、各藻類でピレノイドの役割は似ていても、そこで働くタンパク質は⼤きく違うということである。ピレノイドは異なる藻類群で、類似した形質を独立して獲得する収斂(しゅうれん)進化をした可能性が⾼いと考えられる。

現在、ピレノイドをもたない陸上植物に、遺伝⼦操作でピレノイドを構築し、効率的にCO₂を吸収できる植物を創⽣する試みが世界中で進められている。研究グループは「研究で明らかにしたピレノイドタンパク質は、このような⼆酸化炭素削減に資する応⽤研究に貢献する」と期待を寄せている。