理化学研究所と東京大学の共同研究グループは高い輝度をもつ「X線自由電子レーザー(XFEL)」を、構造解析が難しい微小結晶試料に応用する技術を開発。薬剤候補物質や有機半導体材料などの分子構造の決定に成功した。この成果は米科学雑誌に28日付で掲載されている。
有機合成化学や薬学、材料科学などの分野では大きな結晶が得られない化合物が多く、小さなものの解析技術が重要だ。電子線はX線に比べて試料に数万倍も強く散乱されるため、微小固体の構造解析に利用されているが、電子回折では厚い結晶への適用の制限や得られるデータの品質が劣るという欠点があった。
日本初のXFEL施設「SACLA」を用いて、大きな結晶を作りにくく、方位に偏りがあるなどの性質から、解析が困難だった化合物の構造を決定した。XFELのデータ処理に、電子線から得た分子の並びの情報を与えることで高効率の解析が実現している。
研究グループは「より機能性の高い薬剤や材料分子のデザイン、開発に寄与できる」と評価している。