理化学研究所と東京大学の研究チームは、傷ついた魚の皮膚から放出され周囲にいる仲間に危険を知らせる臭い物質「嗅覚警報物質」を発見した。化学物質による魚の行動制御技術の開発に貢献すると期待されている。
先行研究で傷ついた魚から出る何らかの物質が警報シグナルとして機能し、近くにいる魚に危険を知らせて、忌避行動を引き起こす現象を発表されていた。だが、その実体解明には至っていなかった。
共同研究チームは、モデル生物であるゼブラフィッシュを用い、嗅覚警報物質が忌避行動を引き起こすときに活性化される嗅覚受容体と嗅覚神経回路に着目。行動学や分子生物学、生化学、神経活動イメージングなどの実験手法を組み合わせた研究戦略を用いて警報物質の同定を試みた。
共同研究チームは、ゼブラフィッシュの皮膚抽出物に存在する2つの化合物「オスタリオプテリン」「硫酸化ダニオール」を同定し、ゼブラフィッシュはこれらの物質を同時に嗅ぐことによって危険を察知し、忌避行動を現すことを見いだしている。
研究チームは「この成果は魚類のみならず、脊椎動物に共通な嗅覚忌避行動や社会コミュニケーションにおける嗅覚の役割の全体像解明につながる」としている。