富山大学と聖路加国際大学の研究グループは、高齢脳卒中患者の退院先選択を支援する意思決定ガイドの効果を検証した。退院先を選ぶための意思決定の参加率を向上させる効果が認められたが、積極的な役割を果たす効果までは至らなかった。
調査の参加者は、65歳以上で脳卒中を罹患しており、今後意思決定に直面する99人。介入と対照群に分け、それぞれ病室ごとに無作為に割り付けられた。期間は入院から退院までの約2カ月間で、入院と退院時にアンケートを実施した。
それによると、意思決定においては有意な群間差が認められた。だが、意思決定における役割では、有意な差は確認できなかった。ガイドが、意思決定への参加率を向上させる効果が認められたことを意味している。
一方で、意思決定の葛藤軽減や自ら積極的な役割を果たす効果までは認められなかった。
またその後に行った解析の結果、特に1人暮らしで入院時から退院先を決めかねている人の場合は決断の満足度を高めたり、参加率を高めたりする傾向があると分かった。
研究グループは「療養しながら、1人あるいは家族と一緒に意思決定ガイドを読んで理解し、意思決定していくことは、内容がはじめての経験であるがゆえに難しい」と説明。「家族や専門職者と一緒に活用していくことが望ましいと考えており、今後は意思決定ガイドの普及、活用できる人材育成が課題である」としている。