岐阜大学と徳島大学発のベンチャー「セツロテック」は、動物の発情を抑える「膣内留置プロゲステロン徐放装置(CIDR)」を用いずに人の婦人科で使用される「プロゲステロン錠剤」を使うことでヤギの過排卵処置ができること、磁気共鳴イメージング(MRI)により卵巣動態の観察が可能であることを実験で実証した。
ゲノム編集で生み出したヤギは、医薬品や繊維など有用物質生産を行うバイオリアクターや分子メカニズムを解明するモデル動物としての利用が望まれている。だが、これまでにヤギ作出に必要な小型家畜に対する高度な生殖技術の実践は制限されていた。
今回の研究では、ヤギにおけるプロゲステロン錠剤を用いた代替過排卵の有効性を確認し、さらにMRIにより卵巣の観察が可能であるかを検討した。ヤギの過排卵を起こすため、膣内プロゲステロン錠剤を用いて標準的な過排卵を実施。プロゲステロン投与1日前と投与終了3日前にMRIを用いて卵巣動態を評価している。
また、卵巣モニタリングがMRIのT2強調画像で行われ、排卵はプロゲステロン錠剤投与後13日目に卵胞が消失したことによって確認できた。排卵直後の卵管洗浄により、相当数の卵母細胞を得ることができている。
研究グループは「これらの所見は、プロゲステロン錠剤の投与による過排卵誘起がヤギへの有効な代替手段となるということを示す」とし「ヤギにおける過排卵後の卵巣動態の観察において、3TMRIが従来の超音波検査に代わる有望な検査法であることを示唆した」と説明している。