東京大学の伊藤進一教授らによる研究グループは、日本周辺で多くの魚類に共通した体重の減少が1980と2010年代にあったことを明らかにした。餌をめぐる競合が主な要因で、特に10年代は地球温暖化によるプランクトンの減少が競合を顕著にし、体重変動を引き起こしていることを発見した。
研究では水産庁と水産研究・教育機構が発行している資料を調べ、20年以上の年齢別体重データが記録されているデータベースを整備した。その結果、長期時系列として1978~2018年に4種、中期時系列として1995~2018 年に13種の年齢別の体重データを得た。
グループは魚を稚魚、未成魚、成魚の3つの段階に分類し、各段階の体重に動的因子分析を実施した。その結果、共通トレンドがあった。長期的な時系列からは、1980と2010年代に体重減少を示す傾向が各成熟段階で検出されている。
80年代の体重減少は、水温との関係は不明瞭であり、温度-サイズ則による影響とは判断されなかった。だが、同時期でマイワシが爆発的に増加しており、プランクトンをめぐる競合がマイワシ及び他の魚種の間で生じ、体重減少につながっていると判断された。
10年代の減少はより多くの魚種を含む中期時系列の共通トレンドでも検出されたが、魚類資源量が爆発的には増えていなかった。80と10年代で変化している海洋環境に注目すると、表層と下層の水温差が大きくなっており、それぞれの海水が混合し難い状況になっていた。
海洋の植物プランクトンは下層から供給される栄養塩をもとに繁殖し、それを食べて魚類の餌である動物プランクトンが成長する。地球温暖化によって、下層からの栄養塩供給が減少し、魚類の餌である動物プランクトンの生産が抑制される。その結果、魚類の増大がなくとも、餌をめぐる競合が生じ、体重減少につながったと結論付けた。
伊藤教授らは「地球温暖化に伴い、海洋の餌料プランクトン生産はさらに減少することが危惧される」と説明。「小型化する魚類を念頭に、将来の効果的な資源管理を実施していく必要がある」としている。