物質・材料研究機構(NIMS)と東京理科大学からなる研究チームは、層状化合物二セレン化ニオブ(NbSe₂)が極低温で示す電子密度の周期パターンに、うろこ文様のような互い違いの三角形構造が織り込まれていることを発見した。それが約40年前に理論的に予言され、まだ実証されていなかった構造であることを突き止めている。
NbSe₂ は超伝導性を示す層状化合物。これまでの研究では、NbSe₂の電子の波である「電荷密度波」に星型とクローバー型がそれぞれ繰り返される領域が混在する様子が観察されていた。だが、これら2種のパターンを正確に識別する手法が無かったため、分布の規則が分かっていなかった。
研究チームはNbSe₂の電荷密度波の高解像度データを取得した。これに対して、電荷密度波の波面と原子位置との間のずれに着目した処理を行うことで、星型とクローバー型のパターンの分布を可視化することに成功した。
その結果、2つのパターンがそれぞれ三角形の分域を作っており、それらが互い違いに並んで、織物の柄でいう「うろこ文様」のように敷き詰められていることが分かった。この構造は、1980年代までに行われた研究で予想されていたが、現実の物質でその存在が初めて実証された。
研究グループは「NbSe₂や関連物質における電荷密度波の正確な理解につながり、高温超伝導体にも関係する電荷密度波と超伝導の関わりをひも解く手がかりとなる」と期待を寄せている。