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ヒトiPS細胞から分化した⼼室と⼼房の細胞を区別する因⼦ 京大准教授らが「CD151」発⾒ 疾患の研究や創薬に期待

京都大学の吉⽥善紀准教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞から分化誘導した⼼筋細胞から、特性の異なる⼼室筋と⼼房筋を区別することのできるマーカー「CD151」を⾒いだした。さらに、純化したヒトiPS細胞由来⼼房筋細胞を解析した結果、従来よりも⽣体⼼臓組織の⼼筋細胞に近い機能をもつ⼼房筋細胞を誘導する⽅法を発見している。

⼼筋細胞には、部位と電気⽣理学的な特性の異なる特殊型(サブタイプ)が存在し、⼼室筋細胞と⼼房筋細胞、ペースメーカー細胞に分けられる。ヒトiPS細胞から⼼室筋や⼼房筋などの⼼筋細胞を分化誘導する既存の⽅法では、⽬的以外のサブタイプが混在した状態になることが課題となっていた。

研究グループは、⼼室筋細胞の分化誘導法(VIC)と⼼房筋細胞の分化誘導法(AIC)のそれぞれで誘導した⼼筋細胞群(VIC-CMs,AIC-CMs)を⽐較。細胞表⾯に存在するCD151の発現パターンが異なることを突き止めた。

また、解析により、VICで分化誘導したCD151⾼発現細胞群(CD151highVIC-CMs)に⼼室筋細胞が多く存在する⼀⽅、AICで分化誘導したCD151低発現細胞(CD151lowAIC-CMs)に⼼房筋細胞が存在することを明らかにした。

加えて、⼼房筋細胞を誘導するAICの過程でシグナル伝達経路「Notchシグナル」を阻害することにより、CD151lowAIC-CMs中の⼼房筋細胞の割合を増やすことができ、作製した⼼房筋細胞は⽣体の⼼房筋に近い薬剤応答性を⽰した。

研究グループは「今後、新規薬剤の⼼筋への毒性検査や⼼筋のサブタイプ特異的な疾患などの研究や創薬に活⽤されることが期待される」とコメントしている。